【星屑の囁きみたいに些細な出来事】 作:雲黒斎草菜(利用規約


この物語はフィクションです。実在のよく似たタイトルの作品・土地・人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません。

『星屑の囁きみたいに些細な出来事』【第一章:旅の途中】 作:雲黒斎草菜
2016年 12月19日(月)

 世紀末オンナは田んぼで踊る(後半)


 がさり、がさりと稲穂を踏んづけて包囲を縮めてくるドロイドたち。玲子に対して身の危険を察知したのは確実で、間合いをゆっくりと狭めてくるのがその証(あかし)だ。そうでなければあっという間に取り押さえようと迫ってくる。

 場違いな爽やかな風が吹き抜けると人工の稲の実がたなびき、ぽっかりと穴を開けたような静けさが広がった。

「裕輔……何かない?」
 玲子が後ろ手に何かを催促する声がやけに響いて通る。
「な、な、な、何だよ?」
 声が凍えていた自分にビビッた。恐怖のどん底に落ちると、意識と体が離れちまうんだ。つまり気を失いかけていたということか?

「武器よ。これじゃ持たないよ」
「こ……コラ玲子、弱気になるなバカ。お前だけが頼りなんだぜ」
 情けないけど、これが本心さ。

 バシュッ!
 ギャァンッ!
 右方向から撃ち込んできたパワーレーザーが何かに遮られ、あらぬ方向へ跳ね返った。

「た、タマ……」
 俺のコメカミの横に白い球体が浮遊していた。

『シロタマには銀龍の電磁シールドと同等の防御システムが装備されています。管理者製のアンドロイドは剛健なボディを誇ります』
「おーい。勝手に誇るな。自慢かよ──。でも今回は許す。すげえぜ、タマっこ」

 バシッ! バシュッ
 ギャンッ! ギーン!

 目にも止まらぬ動きで俺の正面を飛び回り、撃ち込まれた二本の熱い発光ビームが当たり、ビームは真正面に弾け跳んで、撃ち込んできたヤツの胸に大穴を開けた。

「おお。おみごと」

『早急にこの場から離れることを推奨します』
「──さっさと武器を探せ! この、うすらトンカチ!」
 報告モードと通常モードに怒鳴られた。

 冷や汗が一筋、耳の横を伝わる刺激を感じつつ、
「ぶ、武器ったって、田んぼの中だし」
 ざっと見渡しても、あるのはドロイドの残骸と過去に襲われた村人の衣服。あとは合成樹皮の稲の海だ。

「この稲の束で戦えないか? お前なら何でも武器にしちまうだろ?」
 実際、こいつは荷造り用の紐でチカンを御用にしたことがある。みごとな縄遣いで、ささっと括られ交番に放り込まれたチカンが気の毒だった。

 なにしろ女性の敵と思しき者には容赦しない性質(たち)だ。しかもこれだけの美貌だろ。自らが囮なってチカン駆除に精を出す日々さ。いったい、いつ仕事してんだろうね。だが世の中には玲子を知らないスケベな男はまだゴマンと存在する。気の毒な話だな。

 荷造りの紐──?
 自分で言っといてなんだが。玲子の黒髪を結っていたリボンが地面に落ちていた。さっき暴れた時に解けたヤツだ。黒い土に黄色い布地が目に映える。

 頑丈な物だと言っていたから荷造りの紐よりましだろ。
「これどうだ? カーボンナノチューブ製だって言ってたじゃないか。迷惑な物を社長もプレゼントしたもんだぜ」
「そうだわ。忘れてた」
 瞳の輝きを取り戻した玲子はリボンの端を手にひと巻きし、左手でしごいてピンと張り、腰を少し落として連中と対峙する。

 マジでリボンを武器にするらしいが。これだけのドロイドを一体ずつ首締めて回る気か。アンドロイドの首を締めたところで致命傷にはならんぞ。俺なら、きゅーっ、でおしまいだがな。

 玲子の顔つきが変わった。槍みたいに尖った眼光に変貌した目はまさに野生の雌豹(めひょう)だ。しなやかな体を起こし、鋭く光る眼差しはまさに獲物を捉えた瞬間だった。
 シロタマが上空へ離れ、数体のドロイドから索敵センサーの赤いビームがリボンに当てられる。

 ドロイドたちがシロタマを無視するのはターゲットを俺と玲子に絞ったからで、連中が戸惑っているのは黄色いリボンだ。頻繁にスキャンビームを当てて、素材を分析しようと躍起になっている。こんな装飾品はスフィアには無かったろうからな。

「へっ、悩め悩め、ダルマ野郎」
「さいっ!」
 まっすぐに引き伸ばしたリボンが宙を切り裂いた。普通の布切れでは無いと言っていたとおり、鋭く振って引き戻すと、ムチのような音と共にドロイドの腕が落ちた。

「すっ、げ──っ。ムチみたいじゃないか」
「カーボンナノチューブ入りのリボンだもん」
 マジで武器になるかもよ。

 しかし襲ってくるドロイドの数が尋常ではない。いくら振り回しても数体を相手するだけで精一杯。迫って来るほうが格段に多い。
 せめて逃げ道だけでも確保しなければ。

「だめだ。力が入らないわ」
「じゅうぶん、すげえけどな」

「なにか固くて長いものはない?」
 と言われても。あるのはドロイドのパーツだけだ。一度剛性が崩れた連中のボディはもろい。何の役にも立たん。

「早々都合よく……」
 都合よく、ハンマーの先が抜け落ちた長い柄が土の中に半分埋まっていた。
 過去にここでドロイドに捕まった村人の誰かが抵抗でもしたのか、たんに落とし物か。

「これ。使えるか?」

 玲子は俺の手から受け取ると、ビシッビシッと宙を切って確認。
「使えるわ」
 くるくると先にリボンを括りつけて、まるで新体操のリボン競技さながらに振って見せた。

「木のしなりを利用できるから、このほうがパワー増大よ」

 にしたってさ。
「なんだか弱っちくないかい?」
 と問う俺の疑問などに、玲子は一顧だにせず、
「こっちもピラミッド作戦よ」
 ついに狂ったか。リボンだけでも笑えるのにな。
「意味解らん!」
「ちょっと土台になってくれる?」

「土台?」

「うん。ジャンプ台よ」
 なんか嫌な役だな。

 玲子は俺を狙ってきたドロイドの足を払い、ひっくり返してから説明する。
「リボンを振り下ろす間合いが足りないの。裕輔をジャンプ台にして飛び上がって距離を稼ぐわ」
 おいおい。
 だいたいリボン競技って、格闘技には登場しないよな。どちらかと言うと華麗な姿を競い合うもんだろ。

 もう一度逃げ道を探る。ドロイドの群れを乗り越えて何とか道路へ出る算段を考えたほうがよさげだ。リボンなんて、しょせん布切れだぜ。
 などという不安は辺りの静けさに払拭された。
「……なんだ?」
 やけに静かだった。

 こっちも観察眼を巡らせる。あっちの集団も数歩下がり俺たちを静観していた。新たな手作り武器に困惑を深めたのだろうと俺は思っていたのだが──。
「ち……違ぁぁう…………。あぁぁぁ」
 こっちの思惑とは別の変化が横で湧き上がっていた。
「お、おまえ…………」
 目を閉じ精神統一を始めた玲子の解(ほど)けた黒髪が、風も無いのに舞い上がろうとしていた。

「静電気か?」
 としか説明ができない。たまに吹く風で持ち上がっているのではなく、自らの重量が相殺されたように、ふんわりと浮き上がろうとする黒髪。周りを包む異様な静けさは、不可思議なパワーに揺らぐ気配を察知したドロイドが一斉にそろってスキャンを始めた静寂だ。

 説明はできないが、これはいつも精神が静まって集中し始めた頃に起きる現象なんだ。不思議なオーラと言えばそれまでだが、不可視の揺らぎに影響された黒髪がユラユラと持ち上がっていく現象。何度か目にしたことはあるが、今回のは異様に力強い。

 こいつは笑って平然と人を殴ると俺が主張するのはこういうところだ。無感情な面(つら)になってくるほどに強さを増すんだ。
 こうなるともう誰にも止められない。ヤバ系の怖いお兄さんたちが一目置くのはこれなのだ。

「私を本気で怒らせたんだからね。あなたたちっ! 覚悟するのよ」
 艶美な面持ちに決意を浮かべ、大勢のドロイドを前にして胸を張ると、ゆっくりと吊り上がった切れ長の目で集団を睥睨した。

 俺の喉がごくりと鳴る。

「ふぅー」
 玲子が深呼吸をした。静かにリボンの片側を手に握り締め、残りを地面に垂らした。

 妙な動きを始めた俺たちの様子を窺って、ドロイドは微動だにせず、代わりに忙しなく動き回る赤色の光点だけが目障りだったが、分析ができずに混迷する様(さま)が見て取れる。俺だって戸惑ってんだ。田んぼに広がったドロイドの海をそのリボン一本でどう切り抜くのか。

「いくわよ。そこに膝を突いて伏せなさい」と俺に命じると玲子は数歩後ろに下がった。

 こいつの前で屈辱的な姿勢だが、そうも言っていられないので、素直に従い、地面にひざまずく。
 玲子が走り出し、容赦なく俺を足蹴に、
「痛てててて」
 背骨が軋み、彼女は空高く舞う。そして物理法則どおり落下。

「な、何?」

「セェェェェェェェェーイッ!!」
 気合いを込めた叫びと共に弓なりに広がったリボンを振り切った。

 ぶぉぉぉぉぉ。

 リボンが放ったとは思えないほどの空気を切り裂き、重々しい音がして長い帯が地面を撃ち鳴らし、一本に伸びた。
 定規で線を引いたように稲穂が一直線に倒れ、そこを猛烈な突風が突き抜けて通ると、近くにいたドロイドのボディが砕け散った。

「あり得ん! マンガだ!」
 目の前に展開されてた光景を否定するしかない。だって──リボンだぜ。
 カーボンナノチューブが織り込ませた特殊な製品だとしても。しょせん柔らかい布地の黄色いリボンだ。

「まだよぉぉぉーっ!」
 息吐く間もなく、玲子は体勢を変えると全身を強く反らした。跳ね返るバネにも似た強い瞬発力で地面に延びていたリボンを振り上げ、さらに気合を込めて撃ち下ろした。

 シュンッ!

 さきほどとはまた異質な、宙を裁ち切る鋭い音が響いた。と同時に黄色いリボンの大半が透きとおり、白い閃光をまといながら円弧を描いて空間を引き裂いた。まさに湾曲した太刀(たち)だと言ってもいい。

 突如、ドンッ、という腹の奥底へ響く、気持ちの悪い振動が伝わった次の間(ま)。

 ごぉぉ───っ。

 風が唸った。
 不可視の圧力めいた物体が玲子の正面から先に向かって突き抜けて行ったのだ。まるで見えない弾道ミサイルが真横に発射されたかのような光景だ。退路を塞いでいたドロイドの集団を物凄まじい爆流が薙ぎ払って行った。

「…………………………」
 意味不明の現象に体は硬直。思考は停止。真っ白け。

 続いて、突き抜けて行った波動に釣られて動いた大量の空気の流れ込んで来た。
 何が起きたのか分からず身を固くした俺の体までも引き摺られそうになったので、慌てて地面を掴んだ。

 ほんの一瞬のことだったが、俺ははっきりと目撃した。ドロイドを吹き払った不可視の圧力波が、天井にぶち当たって消滅するまでの一部始終を。

『空気の瞬断現象です』
 バラバラと小石が舞い落ちる中、報告モードが冷やっこい説明を加える。

「か、鎌風(かまいたち)か!」
 俺の頭上で説明をこなす白い球体へ思わず叫び、もういちど玲子に、
「うそだろ!」
 と唾を飛ばした。
 彼女の最も得意とするのが剣術なのは承知の事実なのだ。なんたって木刀一丁持たせたら、戦車にだって戦いを挑む女さ。でも今回はリボンだぜ。こんな物までも武器にしちまうのか。こうなると玲子の周りに何も置けないな。

 驚きと混乱が混じる俺の思考はひたすら茫然としており、着地した玲子の黒髪がゆっくりと舞い降りるのを眺めていた。

『退却するなら今です』
 凍りついていた世界が覚醒した。

「えっ?」

『ドロイドの態勢が乱れています』
 報告モードの無機質な口調に語り掛けられて、我に戻った。

「ほら、走るよ!!」
 玲子に袖を引っ張られ、走り出さんとする俺をシロタマが止める。

「待ちゅでち!」

「何だよ。まだ何か説明が足りないのか?」

「ハゲから頼まれてたの」
「ハゲって?」
「なんなの?」

『ドロイドの弱点を見つけるために必要な、研究材料を頼まれていました』
「おーい。何だよ今ごろ」
「うっさい! ユースケ! そこの半壊したドロイドを持って帰るから、オマエが担げ!」
「なんで、俺が……」
「文句言うなら、もう撃たれても助けない!」

「なんだとっ!」

「シロタマに従いなさい。上司の命令だかんね! 嫌ならあんた、地面に投げつけるよ」
 俺はボロ雑巾じゃねえっすけど。

 ったくよー。
 しかし床ドンは背骨に悪いことを思い出し、とにかくシロタマが示した半壊ドロイドを持ち上げる。まだ生暖かく、垂れたケーブルから気色の悪い液体がしたたり、両腕がビクビクと痙攣していて、不気味以外何ものでもない。逃走中に後ろから首を締められそうだ。
 ぐずぐずしていられないので、それを担ぐ。
「ほらよ。逃げるぜ!」
「いいわ」
 玲子は鷹揚(おうよう)にうなずき、
「さあ。死ぬ気で走り抜けるわよ」
 散乱したドロイドのパーツが左右に積み上がり、鋭いV字を描いて退路が開いていた。

 改めて思う。とてつもない何かが通過して行ったと。
 至急に世紀末オンナの体を調べる必要がある。ぜったいにこいつは人間じゃねえ。

 安穏とするのはまだ早い。後方から新たなドロイドの進軍が再開した。
 閃光がほとばしり、熱いビームが肩の辺りを数本通過。だが振り向く暇など無い。一目散さ。残り50メートル。

 ドシュ!
 鈍い音をたてて、玲子が着ていた服の袖に黒い穴が空いた。
「あーっ、コレしか着る物ないのに、どうしてくれるのよ!」
 走りながら袖の穴を覗く。

 再び発射音。空気を引き裂く鋭い音が響き、
 ギャンッ!
 玲子の背中を狙って真っ直ぐ撃たれたパワーレーザービームをシロタマがあいだに飛び込んで防いだのだが、俺は異変を感じた。
「おい。何だか威力が増していないか?」
 焼けた金属の臭いと音をまき散らし、ビームは空へ跳ね飛び、天井まで飛び散り、反射して再び地面を貫いていた。

『最大パワーに切り替えたようです』
「本気だということか」
 背中に圧し掛かるドロイドの残骸がますます肩に食い込んできた。
「早く、壁の向こうに入るでシュ!」

 ドシッ
 ギンッ!
 再び発射された高熱のビームを弾かせたシロタマが宙でグラついた。
 ヤツの表面から薄紫色の煙が立ち昇る異様な光景を目の当たりにして、
「だいじょうぶなの?」
 玲子の声も緊迫していた。

『シールドパワー低下。次の攻撃に耐えられるかどうかは不明です』
「あと少しだ! タマ!」 
 わずかに鼻を突く刺激臭に安堵する。壁を乗り越えようとしたドロイドを破壊に至らしめた薬品の臭いだ。

「ここや裕輔! ここから飛び込みなはれ!」
 扉がわずかに開いており、手を振る社長の姿。スキンヘッドから後光が射して見えた。
 そこへと延びる通路は、村人が総出でドロイドの残骸を両脇に掻き寄せてくれたのだろう、とても走りやすい。

 全力疾走の末。
「助かったぁー」
 半壊ドロイドを肩から降ろし、柔らかな地面に飛び込み転がる。同時に扉が閉められた。

 追っ手からパワービームが連射されるが、要塞と化したフェライト製の壁はびくともしない。
「はぁはぁはぁ」
 激しい呼吸を繰り返し、空を見上げる。白い蝶々が二匹、優雅に舞っていた。

 続いて視界に影が射し込み。
「コマンダー……」
 ナナのにこやかな顔と、眼を腫らしたジュジュと母親が俺を覗きんできた。
「ほんとうにありがとうございます」
「こんなのは楽勝よ」玲子は平然と言い。

「だといいんだけどな」
 俺は不安を滲ませていた。

 武器も持たずに対峙するのは不可能だ。玲子は敵をなめている。この広いスフィアに数千がはびこっているんだ。いくら玲子の最終兵器があるって言ったって体力が持つはずがない。
 荒い呼吸が収まるにつれて俺の懸念は膨らむ一方だった。

「なかなかやるな。従者さんも」
 次々集まる大勢の笑顔と共に、白ヒゲを伸ばした老人の温和な顔が割り込み、
「さすが神様の従者じゃ。おてがらですな。改めて御礼を言わせて貰う」
「お礼だなんてとんでもない。行くあてもない俺たちを置いてもらってんだ。礼を言うのはこっちだって」

 半身を起こしたところに差し出されたナナの腕につかまり、起き上がる。
「ご苦労様でした。ご無事で何よりれす」
「お前もな。色々助かったぜ」
 そしてシロタマを探す。たまには褒め称えるべきか。
 あいつの防御が無ければ俺は穴だらけになっていたしな。

 ところがタマ野郎は、集まって来た村人の中から素早くスキンヘッドを見つけると、一目散に真上へ移動して、
「あのね。ユースケなんか何の役にも立っていなかったんだよ。バタバタしていてレイコのジャマばかり」
 くだらん報告を社長にするもんだからつい熱くなる。

「お前は何をしてたんだ。宙に浮かんでいただけじゃないか!」
「んなことないでシュ! オマエを守ってやったじゃないか!」
「あー、ありがとうよ! 助かったぜ!」
 喧嘩腰で言われりゃ、ぞんざいに応えちまうと言うもので。

「わかった、わかった。喧嘩はやめなはれ。無事に帰ったんや、もうエエやろ。ほんで、これでっか? 頼んだ研究材料は」

『中枢部は無傷で、まだメモリー上にデータが消えずに残っています。これ以上新鮮な物はありません』
「鮮魚みたいに言うな!」

 俺たちのハズい会話を笑って過ごしていた主宰が航行エンジニアのグリムと肩を並べて訊く。
「ちと尋ねたいのじゃが。この女性がアンドロイド、なんてことはなかろうな? いやなに。あの動きと一瞬でドロイドを蹴散らしたあのパワーあふれる攻撃は人間業ではない気がするんじゃ」

「私も思いました。そうなるとこちらの女性が本当の白神様ということにも……」

 あんたらの気持ちもよく解る。こいつの身体能力は確かに逸脱している。つまり、
「実は俺も前々から思ってんだ。こいつが人間だと思われる節がまったく無い」

「ちょっと、なんてこと言うのさ。首絞めるよ、裕輔!」

「ほらな。乱暴者で冷血。お前さ。アンドロイド以前に、オンナなのか?」
「まっ!」
 玲子は集まった村人たちには愛想笑いみたないなものを振り撒き、
「こーのぉー!」
 そよ風のように俺の懐に飛び込んだかと思うと、ぐるんと一回転させた。
 上下が逆さになって背中からどすん。

 幸いふかふかした地面で何とも無かったが、逃げる間もない早業でひっくり返されていた。
「なにしやがる! 世紀末オンナ!」
「うっさい!」
 一喝だった。おー怖ぇ。

 グリムはとばっちりを避けて飛び離れ、主宰はくしゃくしゃになって笑う。
「ふぉふぉふぉ。ユウスケくんを締め上げるのは許してやってくれ」
「主宰さん。あんたが言い出したんじゃないか」

「ふぉぉおふぉふぉ。じゃったかのぉ?」
 ジイさんの笑いは心底本物だった。



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